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広陵、1球に泣く 初制覇目指した100年目の夏終わる

2010年08月13日

 広陵は12日、聖光学院(福島)戦に臨み、投手戦の末、0―1で涙をのんだ。1球が命運を分ける、緊迫した試合だった。7回裏、2連打などで2死二、三塁のピンチを招き、空振り三振かと思われた投球がワンバウンド。その間に三塁走者が生還し、決勝点となった。初の選手権大会制覇を目指した100年目の夏。台風が去った後の夢舞台を、広陵の選手たちは全力で駆け抜けた。

写真広陵―聖光学院 7回表広陵1死一塁、渕上は左前安打を放つ。捕手星=遠藤啓生撮影
写真試合を終え、応援スタンドへあいさつに向かう広陵の選手たち=中里友紀撮影

 9回表2死。1点を追う広陵は後がない。打席に向かう渕上真(ふちがみ・しん)君(3年)は次打者席を振り返り、エース有原航平君(同)を指さして言った。「絶対回すからな!」。約4万1千の大観衆が、息をひそめて見守っていた。

 春は、大観衆の一人だった。2月、選抜大会のベンチ入りメンバーが発表された。候補には挙がっていたが、「渕上」の名は呼ばれなかった。昨夏、新チームになってから、ずっと外れ続けていた。「おれ、このままベンチに入れず、高校野球が終わってしまうのかな……」

 3月初めの練習後、植田博貴君(同)を寮の食堂に呼び出した。ベンチ入りしたクラスメート。思いのたけをぶちまけた。「おれ、何で入れないん、植ちゃん」。じっと目を見た。消灯時間になり、その場では答えをもらえず、メンバーは甲子園に向かった。

 3月16日、甲子園練習に補助員として参加する前夜、大阪の宿舎で2人きりになった。「フッチ(渕上)は自分がメンバーに入るために練習してるから。おれはチームを勝たせたいけえ、練習してるんだ」。胸にこたえた。「何かを変えないと」。考えた末に、広陵のモットーでもある「感謝の心」を見つめ直すことにした。

 「今、野球ができることに感謝しよう」。自主練習で、ノックを打ってくれる後輩、送球を受けてくれる同級生、相談にのってくれる仲間――。誰に対しても「ありがとう」を忘れなかった。7月の広島大会。旧広島市民球場での試合前に、そばにある原爆ドームに向かって「今日も平和だから野球ができます。ありがとう」と頭を下げた。

 欲をかかず、平常心でいられるようになった。この日も息が詰まるような展開の中、冷静だった。7回には直球を左前に運び、好機を広げた。

 最後の打席。「つなぐぞ」。その一心だった。打球は投手の頭を越え、二塁へ。一塁ベースを全力で駆け抜けた瞬間、相手側のアルプス席が大歓声に包まれた。えんじに染まった三塁側の広陵応援席は、静まりかえった。「今までありがとう」。心の中で叫んだ。

 「有原があんなに頑張っていたのに。応援してくれた部員にも申し訳ない」。試合後、大粒の涙をこぼした。そして、声を振り絞った。

 「甲子園でプレーさせてもらってありがとう。これ以外に何も無いです」(小俣勇貴)

    ◇

 〈広陵・中井哲之監督〉 聖光学院は守備が良くスキがなかった。6回までこちらが押していると思っていたが、改めて1球の怖さを知った。トップバッターが出ず、なかなか三塁まで進めなかったのが大きかった。選手たちはどちらに転んでもおかしくない試合を堂々と頑張ってくれた。


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