ここから本文エリア

現在位置:高校野球>愛知大会> 記事

愛知大会ニュース

練習の虫「まだ足りなかった」 栄徳・広瀬君 愛知大会

2010年07月29日

 3回表、2点を追う栄徳の2番打者広瀬善正君(3年)の耳に、「外野、もっと前進しろ」という相手ベンチの指示が聞こえてきた。気にならない。自分には猛練習で身につけた打撃力があるとわかっているからだ。

写真3回表、内野安打で出塁して笑顔を見せる栄徳の広瀬善正君=岡崎市民、遠藤啓生撮影

 「ここで塁に出て、流れを変えてやる」

 いつも通り、バットの握りは拳ひとつ分短め。引きつけて野手の間を抜こうと、高めの球を振り抜いた。鋭い打球は相手投手の足元をはじき、三塁前に転がる内野安打になった。進塁後、河野竜太郎君(3年)の中前安打で一気に本塁へ突っ込む。判定はセーフ。歓声に沸くベンチに駆け足で戻った。

 チーム一の「練習の虫」。小学3年で軟式野球を始め、エースで4番。だが進学した栄徳には「エースで4番」がごろごろしていた。控えに回る悔しさを味わう中、中野幸治監督の勧めで三塁手に転向した。「もらったチャンスを裏切りたくない」と、1年生の秋から早朝練習を始めた。

 朝6時に登校し、部室の鍵を毎朝開ける。打撃練習は300球。使っていたブルペンは、広瀬君が踏み込む左打席だけがカチカチに踏み固められた。主将の大河内将君(3年)は「体力がないやつだったのに、今では不動の2番打者」と信頼を寄せる。

 最終回、すでに2死。「悔いを残すな」とベンチから乗り出す仲間に、「任せておけ」と胸をたたいて打席に向かった。ここまでの4試合はすべて逆転勝ち。今度も「まだここからだ」と思っていた。2球目の外角直球に食らいつくと、打球は中堅手のグラブに収まり、試合は終わった。ベンチ前でひざをつき、グラウンドをたたいて顔を覆った。

 「相手の方が練習していて、自分はまだ足りなかっただけです」。そう控えめに話す2番打者は、この夏の5試合で18打数6安打を放った。四死球と犠打も三つずつ。「ここまでがんばって来られたことが、一番の収穫でした」。涙をぬぐう手はまめだらけだった。(工藤隆治)


ここから広告です
広告終わり

このページのトップに戻る