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愛知大会ニュース

天国の康介と全力尽くした 愛工大名電・谷口雄也君 愛知

2010年07月26日

 7点を追う6回、愛工大名電。打席に入った主将谷口雄也君(3年)は、胸に忍ばせたお守りをつかんだ。事故死した同級生の野球部員、徳浪康介君(当時17)の名前が縫い込んであった。外角の直球を中前にはじき返すと、一塁を回って右拳を振り上げた。「天国の康介と甲子園に行くんだ」。まだ、あきらめるわけにはいかなかった。

写真3回表、二塁打を放ち一塁をまわる愛工大名電の谷口雄也君=瑞穂、遠藤啓生撮影

 三重県四日市市のクラブチームで小学6年で全国優勝を果たした。甲子園に行くために愛工大名電を選んだ。だが、春夏通算17回の甲子園出場を誇るチームは、入学以来出場を逃し続けた。昨秋と今春の県大会は初戦で敗れた。2月に徳浪君の事故があってからは、チームメートの心に穴が開いて練習に身が入らなくなっていた。主将として「康介のために甲子園に行くぞ」と仲間を励ました。

 1回戦から勝ち上がり、迎えた相手は強豪の東邦。1回に自ら左前にチーム初安打を放つと、すかさず盗塁して先制のホームを踏んだ。2回には中堅手として左中間への深い打球を飛びついて捕った。

 だが、東邦の猛打にエースがつかまり、点差は開いた。下級生の2人の投手も打ち込まれ、谷口君が中学以来の公式戦のマウンドに登った。「技術はないけど、気持ちは負けない」。そう気合を入れ、ポケットに入れた徳浪君の写真に「大丈夫だ」と語りかけた。円陣でも写真を取り出し、沈む仲間に「康介が見てるぞ」と語りかけた。

 7回裏2死満塁。あと1点でコールド負けのピンチ。「悔いのない球を」と投じた5球目の直球は、前進守備の中堅手の頭を越えた。人工芝に跳ねる白球を見て、「終わった」と思った。整列後、「応援ありがとうございました」と声を振り絞ると、倒れ込んで、動けなくなった。

 ついに甲子園には行けなかった。「康介とともに戦い、全員で力を出し尽くした。それが自分の財産になるはずです」。遺影を胸に抱えたまま、天を仰いだ。(工藤隆治)


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