ここから本文エリア

現在位置:高校野球>愛知大会> 記事

愛知大会ニュース

クールなエースが見せた涙 愛知大会

2010年07月25日

 味方の失策と自らの四球で満塁となった7回表。それでも天白のエース森貴之君(3年)の表情はいつものポーカーフェースだった。

写真天白の森投手

 ここまで3試合を1点差で完投し、体力は限界に近かったが、「思い切って投げるだけ」と気合を入れた。力を込めた直球で一塁への邪飛にうち取り、表情を変えないままマウンドを降りた。

 中学の野球部ではエースとして県大会で優勝。小中学校で同じチームだった兄の啓介さん(20)の後を追って、地元の公立の天白に進んだ。

 1年生ながら2番手投手として迎えた一昨年の夏、3回戦で対戦した東邦で先発したが、四球を連発して自滅した。当時、遊撃手だった啓介さんが「あんな貴之を見たのは初めて」と言うほど、おじけづいていた。

 「強豪校との違いは、気持ちの強さ」。自信をつけるには、練習するのが一番の近道と考えた。全体練習を終えると、冬場は毎日1時間走り込み、暖かくなるとバーベルを担いで足腰を鍛えた。入学時には30キロしか上がらなかったベンチプレスは、3年生で80キロをこなせるまでになった。試合でピンチを迎えても、「やるだけのことはやった」という自信から攻めの投球ができるようになった。

 9回表2死、1学年下の三塁手、足道誉(そくどう・ほまれ)君がマウンドに駆け寄ってきた。「ここまで来られたのは森さんのおかげ。最後は好きな球を思いっきり投げて下さい」。そう言われて、胸がいっぱいになった。選んだのは、自信のあるストレート。投ゴロにうち取り、一塁に送ると、試合中ずっと崩すことがなかったポーカーフェースが涙でくしゃくしゃになった。

 試合は終わった。強豪の成章を相手に、「逃げずに投げきった」と自負はしている。一方で成長して自信がついた分、勝ちたい気持ちが強くなっていた。見上げたスコアボードは3―6。悔しくて、また涙がこみ上げた。(工藤隆治)


ここから広告です
広告終わり

このページのトップに戻る