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「次、打つから」誓いの一打 東邦・山田祐輔選手

2008年08月12日

<西愛知代表 東邦> 5回裏。二塁手へのゴロに、山田祐輔君(3年)は一塁へ全力疾走、頭から突っ込んだ。微妙なタイミングに、恐る恐る塁審を見上げると、両手が大きく水平に開いていた。二塁手の悪送球も重なり、二塁まで進んだ。うれしさよりも、安心感が勝っていた。「絶対に打つ」と誓った打席だったからだ。

写真清峰―東邦 7回裏東邦無死、山田は左越え二塁打を放つ

 それには理由がある。5回表1死三塁。清峰の屋久貴博君(2年)の打球は本塁のほぼ真上に高く上がった。

 捕手の山田君はマスクを外して数歩、追った。だが、いつまでも落ちてこない打球を見つめて思った。

 「めっちゃ高いな」

 予測した落下地点でミットを構えて待ち受けたが、嫌な予感がした。右翼から左翼に吹き抜ける甲子園特有の浜風で、バックスクリーンの旗が強くたなびく光景が目に焼き付いていたからだ。

 予感は当たった。「後ろ、後ろ」と思っていた球は風にあおられ、自分の立ち位置の前に落ちてきた。よろけながら飛びついたが、球はミットを軽くかすめて本塁から2メートルほどのフェアグラウンドにぽとりと落ちた。

 今年のチームは、周囲から「打の東邦」と言われ、打線に注目が集まる。半面、エースの下平将一君(3年)ら投手陣が悔しい思いを抱いていることは、捕手だけによくわかる。それだけに無用な走者は出したくなかった。

 浜風の影響とはいえ、自分のせいで走者を出したミスを取り戻したかった。

 走者を出した後、球を手渡しながら、「次、打つから」と下平君に言った。だからこそ、その直後の打席で打たないわけにはいかなかった。

 終わってみれば4打数3安打。山田君は言う。「失策したけれど、みんなで楽しくやれました。監督にも『楽しまなきゃ怒るぞ』って言われましたから」。頼もしい捕手が引っ張る東邦の夏は、まだまだ続く。(石井潤一郎)


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