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厳しさと楽しさ知った 白鴎大足利・新藤将照主将

2008年08月07日

<栃木代表 白鴎大足利>

写真先発し力投する白鴎大足利の新藤

 この夏、エースが初めてマウンドを譲った。新藤将照(3年)が11失点を喫した8回1死。笑顔のまま二塁手に回り、そこから見えた投手の後ろ姿。「楽に投げろ」。仲間を思いやる言葉が自然に口をついた。

 救援は今夏、公式戦初登板の高井俊幸(2年)。新藤は「自分が投げたい」という悔しさを押し殺し、後輩の背中に「高井に1失点もさせない。守り抜く」と誓った。

 甲子園の舞台の大きさを痛感した。

 立ち上がりの1回表、2死一、二塁から、清峰の林誉之(3年)に投じた2球目。捕手が立ち上がって外そうとした高めの球を左翼席にたたき込まれた。「まさか」。バッテリーに衝撃が走った。

 3点を失うと同時に、この一発が、新藤から内角をつく持ち前の強気を奪った。外角偏重の配球で、ストライクを取りにいく球をことごとくはじき返された。

 失点を重ね、迎えた8回表1死二塁のピンチ。打席には清峰の山崎健太郎(2年)。マウンド上の新藤は「このままじゃダメだ。勝負だ」。栃木大会から通じて860球目。投げた瞬間、「打ち取った」と思った打球は、無情にも左翼席に飛び込んだ。「球は悪くなかった。相手が格上だった」。栃木大会で対戦した相手とは別格のスイングの鋭さに、力の差を認めるしかなかった。

 9回裏、最後の攻撃。新藤は普段立たない、一塁コーチに立った。敗色濃厚な中で、泣き崩れる部員。バタバタするベンチの中で、新藤は誰に言われることもなくコーチボックスに走り、仲間を励ました。

 藤田慎二監督は試合前「新藤で行く。新藤が打たれたらしょうがない」と選手に伝えた。誰もが納得した。栃木大会、このチームを29年ぶりの夢舞台に導いたのは、主将でエースで中軸も担う新藤だった。投げて、打って背中でチームを引っ張った。主将マーク、エースナンバー、甲子園のマウンドは新藤によく似合った。

 チームの命運を痛いほど背負った新藤。後輩たちに勝利の喜びと敗北の悔しさを教えた。「甲子園は厳しい場所でした。でも野球をする楽しさも教えてくれた」。「できることはやった」とすがすがしい表情を見せた。(才本淳子)


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