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最後もフルスイング 常葉菊川の4番打者・中川雅也

2008年08月19日

<静岡代表 常葉菊川> さよならフルスイング。もうこんなチームには巡り合えない。

写真大阪桐蔭―常葉菊川 7回裏常葉菊川無死、中川は右翼線二塁打を放つ。投手福島由、捕手有山

 9回裏、ファウルフライに倒れてベンチに戻りながら、中川雅也君(3年)は涙があふれてきて仕方がなかった。「絶対、最後まで泣くつもりはなかったんだけどなあ。ちくしょう」

 常葉菊川の代名詞「フルスイング野球」に一番似つかわしい男。チームの誰に聞いても「中川にはかないませんよ」と返ってくる。鋭いスイングから飛び出す打球は、しばしば右翼席場外に飛び出した。今年4番打者に抜擢(ばってき)されてから、強力打線の看板を背負ってきた。

 ところが、甲子園入りしてから納得できるバッティングができなかった。微熱とへんとうの痛みで体調も万全ではない。凡打に倒れたときは、必ず一塁に頭から滑り込んだ。フルスイングできず、ふがいない自分にむち打っていたのかも知れない。

 この日もらしくなかった。1打席目に内野ゴロで凡退すると、2打席目は内角の直球に見逃し三振。

 「4番がバットを振れないなんて、問題外だ」。ベンチで原点を見つめ直した。

 「バントなんかしたくない」と、実家のある愛知県の高校ではなく常葉菊川を選んだ。「フルスイング野球」に出会えたときの喜びは忘れない。それをできるのも、あとわずかじゃないか。

 先頭打者の7回裏、3球目を振り抜くと、右翼線を破る二塁打。二塁ベース上でやっと笑顔を見せた。

 9回裏の打席は、瞬く間にカウント2―1に追いつめられた。4球目が最後になる予感がした。だから、三振狙いで思い切り振り抜いた。

 バットにたまたま当たってファウルフライ。「空振りの方がかっこよかったのにな」

 野球人生は続くが、全打席フルスイングできる野球はもうできないことぐらいはわかっていた。さよならフルスイング。(後藤遼太)


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