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倉敷商、魔の5回

2008年08月14日

 「よく頑張った」。応援席から温かい声援が選手に送られた――第90回全国高校野球選手権記念大会で13日、倉敷商は常葉菊川(静岡)と対戦。1回に一挙5点を先取するなど優勝候補の一角と互角に戦ったが、5回には打者11人の猛攻を受けるなど、底力を見せつけられ逆転負けを喫した。

写真倉敷商―常葉菊川 1回表倉敷商無死一、三塁、金谷は左前に先制の適時打を放つ。投手萩原=金川雄策撮影

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 8番打者の打球が遊撃手金谷の前に転がった。「捕球から余裕があり、丁寧に投げようとしすぎて手投げになった」と金谷。悪送球が一塁手上森のグラブの下をすり抜ける間に、二塁走者が生還、1点を返された。5回裏。流れが変わり始めた。

 投手の木元は、走者を出しながらも巧みな牽制(けんせい)と粘り強い投球で切り抜けていた。だが、「内角をどんどん攻めようと思った」という球が、2巡目を過ぎた常葉菊川打線につかまり出した。

 2死二、三塁から3連打で3点を返された。2三振に抑えていた続く5番伊藤には、真ん中寄りの甘い初球を左翼席へ3点本塁打。「打たれ出したら何も考えずに投げていた。気がついたら6―7だった」。この回、内野陣が2度マウンドに集まったが、木元は何を言われたか覚えていなかった。

 6回に同点にしたが、勝ち越しの一打が遠い。

 8回裏、先頭打者の打球を三塁手近藤が拾った。「緩い打球だった。捕る時点で焦っていた」。慌てて投げた球は、上森の頭上を越えてフェンスへ。

 「失策はプレッシャーにはならなかった。踏ん張って流れを戻そうと思った」と木元は言う。しかし、失策が再び常葉菊川打線を勢いづかせた。2点を勝ち越され、9番町田にはバックスクリーンへ2点本塁打を浴びた。木元は、決勝点となる本塁打をマウンドでじっと見送った。

    ◇

 願ってもない立ち上がりだった。常葉菊川のエース左腕を意識して組んだ打線は、2年生右腕に対し「誰や、こいつ」と発奮し、序盤から攻め立てた。

 先頭打者の湯浅から、近藤、金谷が3連打し1点を先制。無死満塁で、初戦で2度の好機に凡退していた上森が中越えの2点二塁打を放った。二塁上で上森はうれしそうに右手を上げた。

 さらに新谷、板野が鮮やかに連続スクイズを決め、一挙5点を奪った。岡山大会準決勝で2度バントを失敗していた板野は、2球目を一塁線に転がした。表情は変えずベンチに戻ったが「めちゃくちゃうれしかった」。余裕が生まれた3回の2打席目には中前適時打を放ち、一時は点差を6点に広げた。

    ◇

 9回、2死二塁で6番新谷が打席に立った。「2点返して、もっといけると思えた」。初球を思い切って振った打球は遊撃手の前に弾み、一塁に頭から滑り込んだ。アウト。「終わったんだと思って、頭が真っ白になった」と新谷。倉敷商の甲子園が幕を閉じた。

 「勝てる試合だったと思うだけに悔しい。けど個人的には満足。自分には100点満点をあげたい」。試合後、インタビューに呼ばれた木元は、笑顔も見せながらはきはきと答えた。けれど、インタビューを終え、ロッカールームに戻ると、表情をゆがめ、左手で顔をぬぐった。(上田真美)


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