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つかんだチャンス、「やったっ」 金沢・山田選手

2008年08月13日

<石川代表 金沢> 2回表、2死満塁。浅井純哉監督が突然、タイムを取った。「何だろう」。一塁のコーチスボックスに立っていた山田康平(2年)は一瞬きょとんとした。

 「代打だ。思い切っていけ」

 初戦、3打数2安打と好調だった2番打者の石野貴大(3年)。しかし、この日は相手の先発投手を打ちあぐねた。「相手に、打ちとった勢いのまま投げさせたくなかった」。流れを引き寄せようとした浅井監督の、勝負をかけた采配だった。

 「代打、ライト、山田君……」。甲子園球場に、初めて響き渡る自分の名前。山田はこの瞬間をずっと待っていた。

 山田は石川大会決勝でも代打で適時打を放った。その頃から「気持ちも、調子も上がっていた」。それなのに、試合に出してもらえないのが悔しかった。出られない代わりに、練習ではいつも頭の中に甲子園の大観衆を思い描いた。「チャンス、ここ、チャンスだぞ」。打撃練習での一球一球が勝負だった。「悔しい」と思った分だけ、山田は「チャンスに強い打者」になった。

 「やっぱり緊張した」という2回表の甲子園初打席は二塁ゴロ。ベンチに戻ると、4番の林昂平(2年)が「落ち着け」と声をかけてきた。初戦も一塁コーチとして仲間の戦いを見守った山田。「落ち着いていこう」。肩をぐるっと回してみせても表情が硬く、一番緊張しているように見えたのが林だった。「お前の方こそ」とおかしくなったが、林の気遣いがうれしくて気持ちに余裕ができた。

 2打席目、4回1死一、二塁の好機に、思いっきりたたいたのは真ん中に来た直球。「打った瞬間、抜けたのがわかった」。手応えと一緒に、うれしい震えが両手の指先まで伝わった。「やった、やったっ」。握った拳を空高く突き上げた。走者一掃の逆転適時三塁打。山田の拳に、ベンチもスタンドも、勝利を予感した。

 しかし8回、本塁打で同点とされ、延長戦へ。まさかのサヨナラ負けを喫した。

 山田は「全力を出したけど、相手のレベルが高かった」と負けを認めた。でも最後まで「悔いはない」とは言わなかった。食いしばった唇から絞り出した一言は「すごい悔しい」。

 赤く腫らした目を上げ「勝てるような練習をして、絶対ここに戻ってきます」と、はっきりとした声で言い切った。=敬称略

(加藤藍子)


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