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広陵(広島)ニュース

広陵らしさ最後まで 「思い切りプレー悔いない」

2007年08月23日

 「スタンドの雰囲気にのみ込まれた」――。第89回全国高校野球選手権大会の決勝が22日にあり、広陵は佐賀北に4―5で敗れた。8回途中までは4点をリードしていたが、2連打を浴びてピンチを招くと、快進撃を続ける佐賀北を応援する観客らの声援が最高潮に。押し出しと満塁本塁打で一挙に逆転を許し、悲願の初優勝は成らなかった。甲子園という大舞台でもサインに頼らずに自ら考える広陵野球を実践した選手たち。突然の敗戦にも、「やるべきことはやった」と胸を張っていた。

写真2回表広陵2死満塁、櫟浦は左前適時打を放つ=22日、阪神甲子園

 エース野村の調子は良かった。スライダーのキレが抜群にいい。序盤は少し制球が乱れたが、いつも通り回を重ねるごとに投球は安定してきた。

 6回には、いずれもスライダーで3者連続の空振り三振。7回を終えた段階で、10奪三振、被安打1、失点0と佐賀北打線をまったく寄せ付けなかった。

 広陵を応援する人は誰もが、勝利を確信していたに違いない。8回だった。1死から2連打を浴び、一、二塁。佐賀北を応援する三塁側スタンドからは1球ごとに大きなどよめきが起きた。

 続く打者に四球を与え満塁。どよめきはさらに大きくなった。三塁側だけでなく、球場全体から手拍子の大きな波が押し寄せた。

 続く打者には丁寧な投球を心がけた。カウント1―3からの5球目。狙い通りに真ん中低めへ直球を投じた。入った、と思った。判定は「ボール」。野村は信じられないような表情で、苦笑いを浮かべた。押し出しで1点を与え、なお満塁。球場は異様な雰囲気に包まれた。

 そして、次打者にストライクを取りにいった甘いスライダーを狙われた。逆転の満塁本塁打。甲子園が揺れた。

 「周りの雰囲気は気にしていなかった。勢いに乗られた」。試合後、野村はぼうぜんとしていた。

 広陵の強さは存分に見せた。

 2回、山下、福田、林の3連打で無死満塁の好機をつくると、岡田淳の内野ゴロの間に1点を先制。さらに2死満塁から櫟浦の左前適時打で1点を追加した。

 7回には、1死一、二塁から野村が左中間二塁打を放ち、2点を加えた。野村は「まだまだ点を取るぞという気持ちだった」。

 逆転されて迎えた9回には、先頭打者の林が左前安打で出塁。岡田淳がバントで一塁線にゴロを転がした。一塁手が捕球し、岡田淳にタッチを試みる。その間に、一塁走者の林は二塁を駆け抜け、一気に三塁を狙った。「三塁手が前に出ていたから行けると思った」。タイミングはぎりぎりだったが、タッチアウト。「セーフなら局面が違っていたかもしれなかった。監督は『ナイスラン』と言ってくれた」

 最後の最後まで、一つでも先の塁を狙う広陵らしさを失わなかった。中井監督は「選手たちは最後まであきらめなかった。うちらしいプレーだった」と称賛した。

 試合後、主将の土生は言い切った。「こんないい試合ができて、満足です」。野村も「思い切りできたので、悔いはない」。さっぱりした表情だった。

 しかし、中井監督は悔しさを隠さなかった。「悔いはある。勝てなかったから」

 体調は万全でなく、この日もベンチの奥で試合を見守った。好機やピンチでベンチの最前列に立ち、笑顔で選手たちを勇気づけていた。

 「周りは佐賀北の応援ばかりで、選手たちもこたえていた。それでも死にものぐるいでやってくれた。負けた気がしない。選手には感謝の気持ちでいっぱい。本当にかわいい子ばかりです」

 選手たちを気遣う言葉に、それまで冷静だった野村の目に涙が浮かんだ。周りにいた他の選手たちも涙をこらえきれず、嗚咽をもらした。

 「この負けは、もっともっと頑張れということ。これからの人生にしっかりいかせと言いたい」。中井監督の選手にかける言葉はこの日も愛情にあふれていた。


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